トムキャットと言えばリビアや湾岸での活躍もありますが、なんと言ってもスクリーンでの活躍が有名で『ファイナルカウントダウン』や『トップガン』への出演がトムキャットの名を航空機ファン以外にも知らしめることとなり、これらの映画が新たな航空機ファン(さらにはパイロット志望者まで)を増やすことにもなりました。
しかし東西の緊張緩和によって長射程ミサイルによる迎撃能力の必要性は薄くなり、最近ではこのF-14も空母上から徐々に姿を消しつつあり“バリバリの現用機”とまでは言えなくなってきました。対地攻撃能力の付加、いわゆる“ボムキャット”化によって延命も図られていますが、近い将来F/A-18E/Fが部隊配備されるとこの最後のグラマン戦闘機も姿を消すことになるでしょう。
新F-14シリーズはA/B/Dのバリエーションの他にも、スペシャルマーキング機などデカール替えのものが多数発売されています。今回作るキットもそのデカール替えキットの1つです。
胴体も分割が激しく、上下2分割された基本部分の他に、尾部、エアインテイク部、主脚格納室などのパーツに分かれています。
トムキャットの特徴の1つに主翼前方の張り出し部分(グローブ)にグローブベーンと呼ばれる引き込み式の小翼があり、高速飛行時の安定性を高める効果があります。このキットでもベーンが別パーツになっていて、インストには展開状態か格納状態を選択するよう指示されています。しかしこれは間違いで、F-14BおよびDではこのグローブベーンは廃止されています。なのでベーンは格納状態にして瞬着等で完全に埋めてしまいます。また、このグローブ部分は接着面が少ないわりに主翼の取り付け時などに強い力が掛かるので、瞬着でガッチリ接着させないとすぐに割れてしまいます。
主翼は前縁スラットとフラップが別パーツとなっていて下げ状態にすることもできますが、今回は主翼を後退させるので上げ状態としました。スラットのパーツははやや厚く、主翼と接着するとやや段差ができるので、軽くペーパーを当ててならしました。 主翼端、垂直尾翼、グローブ部にあるライトはすべてクリアパーツとなっています。これらは非常に小さいパーツなので、特にピンセットでの取り扱いはパチンと弾いて行方不明してしまわないように細心の注意が要ります。
キャノピーはこのキットの頃から良く使われ始めたスライド金型によるΩ型の断面形状がちゃんと再現されています。それ故にキャノピーの中心に思い切りパーティングラインが入ってしまっているのでこれを消してやらねばなりません。クリアパーツのペーパー掛けは#800ぐらいから始めて#1200以上のペーパーを掛けた後にコンパウンドで磨きます。
パーティングラインは消えたもののヤスリ傷が取れなくなるんじゃないかと少々不安になりますが... |
→ | 奇麗に磨けばハイ元通り。主翼端のライトなども同様に処理します。 |
組み立てた機首部分と胴体部分を接合するのですがこの部分の合いが良くありません。機首ラインに段差ができないように接合しようとするとインテイクとの間に隙間ができ、逆の場合はその逆になってしまいます。メーカーの作例等をみてもやはりこの部分で苦労している感じが見られ、このキット最大の難点となっているようです。私は少し段差ができる状態で接着してペーパー掛けを行うことにしましたが、段差は消えてもラインがちょっと不連続になってしまいました。
以上で主要部分の組み立ては終り。全体的にパーツ同士の合いが悪いわけではないのですが、モールドが浅くペーパー掛けがしにくいため若干の段差を修正するだけでもモールドの彫り直しが必要となるので非常に面倒です。さらにF14“新”キットと言ってももう10年も経ち、しかも人気機種だけ合ってそうとう使われたせいか金型も痛みが出始めていて、いたるところにバリが出てしまっています。またモールドも浅くなっている部分が多く、サフを吹くと消えそうなので、パテは一部隙間埋めに使うだけに止めて他は瞬着を使い、表面は目の細かいペーパーだけで仕上げるようにしました。
塗装は2トーンのグレイだけなので楽ですが、それ故に全体的に単調になってしまいます。ウェザリング等でアクセントをつけたいところでしたが、パッケージ写真に出ている実機が塗装したての奇麗な姿をしていたのでこのままで良し!としました。基本のグレーを塗った後、さら機首と尾翼に部隊独自のカラーリングである黒を塗装し、その他エンジン周りなど細部の塗装を行います。
脚周りは細かいパーツが多いのでちと面倒に感じます。脚柱や機内の色は白なので数回重ね塗りした後、部分的に軽く墨入れしておきました。前脚はオレオが伸びた状態のものと縮んだ状態のものがセットされていて、後者の場合は発艦直前の頭下げの状態が再現できます。私は今回は通常の地上姿勢にしたかったので前者にしました。
B型の最大の特徴であるF110-GE-400エンジンのノズル部分はA型キットと同じ様に開いた状態、絞った状態を選択できます(A型キットの場合はここにもエッチングパーツを使う)。絞り状態のパーツは一体型ですが、開状態のパーツは左右それぞれ6つに別れているのでやや手間です。しかも内側の押し出しピンの跡がかなり目立ってしまうのでパテ埋め修正も必要でした。
組み立ての最後は機首周りのピトー管や機体上部のアンテナ、パイロン、エアブレーキ、フックなど細かいパーツの取り付け。爪の先ほども無いような細かいパーツがあるのでランナーからの切り離し、ピンセットでつまむ際には気をつけないと、もし飛ばしてしまうと探すだけで大変な時間と労力を費やすことになります。 あと本当はキャノピー内にこれまたエッチングパーツのバックミラーを(キャノピー開状態の場合はさらにキャノピー内側のディティールパーツも)つけたりするのですが、キャノピーを曇らせない低白化タイプの瞬着が手元に無いし、キャノピー閉じりゃいいやってことでこの部分の取り付けは瞬着買うまで延期(!)にしました。F-14の機首左側には乗員が搭乗時に開いて使うステップがあるのですが、キットでもこの部分は別パーツになっていて格納・展開どちらの状態にもできます。キャノピー閉じということでここも閉じておこうと思ったのですが、機体とこの部分のパネルを別々に塗装してしまっため、同じ色を塗ったはずが微妙にトーンに違いが出てしまいました。塗り直すのももう面倒なので展開状態にすることで解決。
アクセサリーはTARPS(戦術航空偵察ポッドシステム)ポッドと燃料タンク・・・だけです。最近撮影されている写真ではF-14は以前のようなフェニックス+スパロー+サイドワインダー満載というのはあまり見られなくなり、爆弾架にサイドワインダー程度の“ボムキャット”仕様の装備が目立つようになりました。このキットもどうせならボムラック等のパーツが付いたボムキャットキットにしてほしかったのですが、そうなってないのでTARPSとタンクだけの偵察任務装備にしました。サイドワインダー2本もつけるつもりでしたが、写真撮影までに準備できませんでした(汗)。
そしてデカール貼り。細かい注意書き等のデカールが多いのでいつもならウンザリしてしまうところですが今回は違います。
このキット(パッケージ)はF-14Bキットのデカール替え限定モノ(F-14B自体が通常ラインナップに無いのですが・・・)でその名もF-14B TOMCAT “VF-103 Jolly Rogers”なのです!
ここで「おおっ」っと思った方はかなりの海軍機ファン(笑)だと思いますが、“Jolly Rogers”と言う名前を知らなくてもF-14の垂直尾翼に描かれた海賊旗(スカル&クロスボーン)マークを見たことがある人は多いと思います。
ただ"VF-103"となっている通りこのJolly Rogersは映画『ファイナルカウントダウン』に出ていた頃のVF-84 Jolly Rogersとは違います。VF-84は冷戦終結後のF-14飛行隊削減のあおりを受けて1995年に惜しまれながらも解散してしまいました。
しかし伝統があり世界的にも人気の高いマーキングを無くしてしまうのは惜しいと言うことで、それまでSluggersを名乗っていたVF-103がVF-84の解散と同時にJolly Rogersという名前とマーキングを受け継ぎました。このキットはそれから間も無い頃のVF-103の姿をキット化したものと思われます。
そういったわけで日本の302飛行隊の尾白鷲マークと双璧なす(?)格好良いマーキングの機体がもうすぐ現れるとなると俄然やる気になるわけです。セットされているデカールはVF-103のマーキング2パターンだけで、一方は通常の海賊旗ですが、もう一方はスペシャルマーキングと思われるクロスボーンがスティックキャンディーになっていてドクロがサンタ帽(?)をかぶっているというしょーもないものなので当然前者を採用。いつもなら疲れるので休み休みやる作業を今回は一気にやることができました。
それにしてもこのキット・・・作り難かった・・・。F-14ということでヒコーキファンが真っ先に飛びつきそうなキットですが、プラモデル初心者にはあまりお勧めできません。上の方で書いた通りハセガワが旧キットも並行して出しているのはそういった初心者への配慮なのでしょう。F-14のキットはフジミ(1/72)やタミヤ(1/32!)の他、イタレリなどの海外メーカーもほとんどが出しているので自分にあったものを選ぶのが良いと思います。
というわけで前回のF-84からえらく間が開いてしまいましたが久しぶりに新造機のロールアウトです。
いやぁ、F-14が現役なうちに完成できてよかった。