ATIの逆襲!?
ビデオチップメーカーの老舗ATIからRADEON8500が発売されました。ATIはこれまでもRageFuryMAXXやRADEONなど高性能なチップを出しながらも、リリース時には既にnVidiaがそれを上回る性能のものを出していたがためやや影が薄かったのですが、今回は発売前から雑誌等で“DirectX8.1を完全サポート”、“GeForce3を上回るパフォーマンス”、“価格は35,000円程度”と紹介され、高い注目と期待で発売が待たれました。
そして先月下旬ごろからバルク版が国内で出回り始めました。またATIはこれまでオンボード用以外には他のメーカーにチップを供給してこなかったのですが、nVidiaにこれ以上シェアを奪われるのを危惧したのかこの方針を転換したのでこのRADEON8500もATI以外のメーカーから搭載ボードが発売されるようになり、バルク版が出回り始めた直後からいくつかのメーカーの箱入りRADEON8500(当時)搭載ボードが出回るようになりました。
今回私が購入したのはTORICA(東海理化販売株式会社)というメーカーから発売されているBOX版です。購入価格は\34kですが10%還元が受けられる某カメラ店で購入したので実質\31kってとこでしょうか。この製品を選んだ理由は単に最初に見かけた(現在でも他に見ない)RADEON8500ボードだからです。このパッケージにはDVD再生ソフト『PowerDVD』とビデオ編集ソフト『PowerDirector SE』がバンドルされています。他にはDVI→VGA変換コネクタ、S映像ケーブル、ドライバCDが付属しています。“簡易日本語マニュアル付”と箱に書いてありますが、私の買ったものには入ってませんでした。梱包ミスかもしれませんが特に必要もないのでメーカー問い合わせはしてません。
肝心のボードはATIが他のメーカー向けに製造したもので、TORICAのシールが貼られている以外はおそらくバルク版として出回っているものと同一と思われます。
評判通りの高パフォーマンス
早速3DMark2001でパフォーマンス検証。ドライバはWindow98/ME用の4.13.7191です。
“DirectX8.1を完全サポート”の言葉どおり“Pure Hardware T&L”が選択され、今まで通らなかったPixel Shaderのテストを含む全てのテストが通りました。DISPLAY Platform RADEON 8500 DDR CPU Optimization D3D Pure Hardware T&L Width 1024 Height 768 Depth 32 bit Z-Buffering 24 bit Texture Format Compressed Buffering Double Refresh Rate Default FSAA Mode None RESULTS 3DMark Score 6995 Game 1 - Car Chase - Low Detail 110.3 fps Game 1 - Car Chase - High Detail 39.3 fps Game 2 - Dragothic - Low Detail 121.2 fps Game 2 - Dragothic - High Detail 69.5 fps Game 3 - Lobby - Low Detail 109.5 fps Game 3 - Lobby - High Detail 49.6 fps Game 4 - Nature 21.0 fps Fill Rate (Single-Texturing) 615.6 MTexels/s Fill Rate (Multi-Texturing) 1644.0 MTexels/s High Polygon Count (1 Light) 28.0 MTriangles/s High Polygon Count (8 Lights) 9.0 MTriangles/s Environment Bump Mapping 92.0 fps DOT3 Bump Mapping 78.7 fps Vertex Shader 79.4 fps Pixel Shader 71.4 fps Point Sprites 25.3 MSprites/s
以上は私が購入した10月25日までのことでした。
と思ったら・・・
その後バルク版を買った知り合いやネット等の情報から現在のドライバはテクスチャクオリティが低く設定されていると聞きました。クオリティを他のビデオカード並にするとベンチマークの数値は若干下がりGF3よりも下回ると報告されています。これはわざとクオリティを落としてフレームレートを上げるベンチマーク対策ではないかと言われています(ATIに限らずいろんなメーカーで昔からよくされてはいるのですが・・・)。
さらにバルクやOEM向けのRADEON8500は当初発表されていたコアクロック275MHz/メモリクロック550MHz(275MHzDDR)より低い250MHz/500MHzであるらしいことを知り、私も自分のカードのクロックすうを調べたらやはり250MHzであることが確認されました。ATIのバルク品には以前からこういうことがあるらしいのですが、さらに衝撃だったのはバルクやOEM向けに製造しているクロック250MHz版のRADEON8500は“RADEON8500LE”であるとATIが発表したことです。そして正真正銘275MHz版RADEON8500はATIのリテール版(価格4万円ほど)でしか発売されないとのこと・・・
ゲームの動作状況
フライトものではありません(でもA-10やSu-25、AH-1、Mi-24等が操作できる)が世界的に大人気のFPS『Operation FlashPoint』を私も今プレイしています。HWT&L対応でありながら当初はKYRO2でプレイしていたのですが、RADEON8500のDirect3D HWT&Lに切り替えたとたんフレームレートが劇的に向上しました。1280x1024(32bit)でも滑らか動くのは驚きです。1600x1200でも動きそうですが私のモニタではリフレッシュレートが低くて長時間のプレイには向きません。
しかし喜んだのもつかの間、ゲーム中にハングアップが頻繁に起こるようになりました。解像度が高すぎて負荷がかかってるのかと解像度やビット数を下げてみましたが症状は変わりませんでした。
動いているときは快適でも頻繁にハングするのではゲームがぜんぜん進められないので結局RADEON8500でのプレイを諦め、既にKYRO2を手放してしまったためVoodoo5を復帰させGlideでプレイする羽目になりました(苦笑)。 こんな感じなのでFSの動作状況を確認できるはずもありません。それでもいくつか試したのですが、ポリゴンが欠け等が目立ち酷い状態です。ATIはベンチマークソフト以外のアプリケーションで動作確認をしていないのでしょうか?
企業としてのモラルが問われる
DirectX対応ハイエンドビデオカードの分野がnVidiaの独占状態にあり価格が高騰する中、それ以上のパフォーマンスとより安い価格という振れ込みで登場したRADEON8500は私も含め多くのPCユーザーが大きな期待をしていたと思います。しかしベンチマーク対策疑惑、不具合多発・不安定極まりないドライバ、流通後にバルク・OEM向けの製品名を変えるといった今回のRADEON8500にまつわるATIの行いにはがっかりさせられただけでなく怒りすら感じます。こんなことをしてはnVidiaからシェアを奪回するどころか信用を失うだけなのでは?これではATIに期待していた人が“やっぱりnVidiaが良い”って思ってしまうことになってしまいます。
それでもDirectX8.1に完全対応し、GF3に匹敵するパフォーマンスを持ちながら価格はそれよりも安いというのは評価されるべきですし、nVidiaの新チップGeForce3Ti500搭載カードが5万〜6万円という価格で発売されたを見るとやはりATIが頑張ってくれないとビデオカードの将来は暗いわけです。ATIはAll-In-Wonderに見られるように早くからTVチューナーやビデオキャプチャ、DVD再生支援機能といったマルチメディア指向の製品を手がけ、発色の良さからMach64時代からのファンも多いのだから、変に“フレームレート至上主義”を追わずにこういったATIの独自性を大事にしつつこれまで通りにパフォーマンスを向上させていって欲しいものです。
現時点ではRADEON8500(LE)はお勧めできません。今後のドライバの改善によっては前評判通りのものになるかと思いますが、その時にはまたFSの動作状況など報告しようかと思います。
関連URL
ATI
http://www.ati.com/jp/pages/jp_index.html
TORICA
http://www.torica.com/
AKIBA PC Hotline 『「RADEON 8500」のリテールパッケージ発売、バルク品は別モデルと判明 』
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20011103/etc_r85retail.html
PC Watch 『ATI、RADEON 8500の低クロック版「RADEON 8500LE」を発表 』
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/20011030/ati.htm
ASCII24 『初のブランドネーム入りリテール版RADEON 8500カードがTORICAから、クロックはバルクと同じ』
http://akiba.ascii24.com/akiba/news/2001/10/25/630757-000.html