Special Report - 04 Nov. 2001
ATI RADEON8500LE

ATIの逆襲!?

ビデオチップメーカーの老舗ATIからRADEON8500が発売されました。ATIはこれまでもRageFuryMAXXやRADEONなど高性能なチップを出しながらも、リリース時には既にnVidiaがそれを上回る性能のものを出していたがためやや影が薄かったのですが、今回は発売前から雑誌等で“DirectX8.1を完全サポート”、“GeForce3を上回るパフォーマンス”、“価格は35,000円程度”と紹介され、高い注目と期待で発売が待たれました。
そして先月下旬ごろからバルク版が国内で出回り始めました。またATIはこれまでオンボード用以外には他のメーカーにチップを供給してこなかったのですが、nVidiaにこれ以上シェアを奪われるのを危惧したのかこの方針を転換したのでこのRADEON8500もATI以外のメーカーから搭載ボードが発売されるようになり、バルク版が出回り始めた直後からいくつかのメーカーの箱入りRADEON8500(当時)搭載ボードが出回るようになりました。

今回私が購入したのはTORICA(東海理化販売株式会社)というメーカーから発売されているBOX版です。購入価格は\34kですが10%還元が受けられる某カメラ店で購入したので実質\31kってとこでしょうか。この製品を選んだ理由は単に最初に見かけた(現在でも他に見ない)RADEON8500ボードだからです。このパッケージにはDVD再生ソフト『PowerDVD』とビデオ編集ソフト『PowerDirector SE』がバンドルされています。他にはDVI→VGA変換コネクタ、S映像ケーブル、ドライバCDが付属しています。“簡易日本語マニュアル付”と箱に書いてありますが、私の買ったものには入ってませんでした。梱包ミスかもしれませんが特に必要もないのでメーカー問い合わせはしてません。 肝心のボードはATIが他のメーカー向けに製造したもので、TORICAのシールが貼られている以外はおそらくバルク版として出回っているものと同一と思われます。

評判通りの高パフォーマンス

早速3DMark2001でパフォーマンス検証。ドライバはWindow98/ME用の4.13.7191です。

DISPLAY
Platform	RADEON 8500 DDR
CPU Optimization	D3D Pure Hardware T&L
Width	1024
Height	768
Depth	32 bit
Z-Buffering	24 bit
Texture Format	Compressed
Buffering	Double
Refresh Rate	Default
FSAA Mode	None

RESULTS
3DMark Score	6995
Game 1 - Car Chase - Low Detail	110.3 fps
Game 1 - Car Chase - High Detail	39.3 fps
Game 2 - Dragothic - Low Detail	121.2 fps
Game 2 - Dragothic - High Detail	69.5 fps
Game 3 - Lobby - Low Detail	109.5 fps
Game 3 - Lobby - High Detail	49.6 fps
Game 4 - Nature	21.0 fps
Fill Rate (Single-Texturing)	615.6 MTexels/s
Fill Rate (Multi-Texturing)	1644.0 MTexels/s
High Polygon Count (1 Light)	28.0 MTriangles/s
High Polygon Count (8 Lights)	9.0 MTriangles/s
Environment Bump Mapping	92.0 fps
DOT3 Bump Mapping	78.7 fps
Vertex Shader	79.4 fps
Pixel Shader	71.4 fps
Point Sprites	25.3 MSprites/s
“DirectX8.1を完全サポート”の言葉どおり“Pure Hardware T&L”が選択され、今まで通らなかったPixel Shaderのテストを含む全てのテストが通りました。
スコアはHWT&L使用と全試験通過もあってKYROIIのSWT&Lと比べると2.5倍以上になります(あまり意味無い比較ですが)。GF3を上回っているかどうかは確認できませんが非常に高いパフォーマンスであることは間違いありません。ただしこのパフォーマンスが活かされるのはHWT&Lに対応したソフトだけです。
そこで次に従来通りSoftware T&Lでのパフォーマンス測定をしようと思ったのですが、途中でエラーが出て中断してしまい測定できませんでした。それでも動いている部分を見る限りソフトウェアT&Lでも高いフレームレートが出ています。

以上は私が購入した10月25日までのことでした。

と思ったら・・・

その後バルク版を買った知り合いやネット等の情報から現在のドライバはテクスチャクオリティが低く設定されていると聞きました。クオリティを他のビデオカード並にするとベンチマークの数値は若干下がりGF3よりも下回ると報告されています。これはわざとクオリティを落としてフレームレートを上げるベンチマーク対策ではないかと言われています(ATIに限らずいろんなメーカーで昔からよくされてはいるのですが・・・)。

さらにバルクやOEM向けのRADEON8500は当初発表されていたコアクロック275MHz/メモリクロック550MHz(275MHzDDR)より低い250MHz/500MHzであるらしいことを知り、私も自分のカードのクロックすうを調べたらやはり250MHzであることが確認されました。ATIのバルク品には以前からこういうことがあるらしいのですが、さらに衝撃だったのはバルクやOEM向けに製造しているクロック250MHz版のRADEON8500は“RADEON8500LE”であるとATIが発表したことです。そして正真正銘275MHz版RADEON8500はATIのリテール版(価格4万円ほど)でしか発売されないとのこと・・・

ゲームの動作状況

フライトものではありません(でもA-10やSu-25、AH-1、Mi-24等が操作できる)が世界的に大人気のFPS『Operation FlashPoint』を私も今プレイしています。HWT&L対応でありながら当初はKYRO2でプレイしていたのですが、RADEON8500のDirect3D HWT&Lに切り替えたとたんフレームレートが劇的に向上しました。1280x1024(32bit)でも滑らか動くのは驚きです。1600x1200でも動きそうですが私のモニタではリフレッシュレートが低くて長時間のプレイには向きません。
しかし喜んだのもつかの間、ゲーム中にハングアップが頻繁に起こるようになりました。解像度が高すぎて負荷がかかってるのかと解像度やビット数を下げてみましたが症状は変わりませんでした。

動いているときは快適でも頻繁にハングするのではゲームがぜんぜん進められないので結局RADEON8500でのプレイを諦め、既にKYRO2を手放してしまったためVoodoo5を復帰させGlideでプレイする羽目になりました(苦笑)。 こんな感じなのでFSの動作状況を確認できるはずもありません。それでもいくつか試したのですが、ポリゴンが欠け等が目立ち酷い状態です。ATIはベンチマークソフト以外のアプリケーションで動作確認をしていないのでしょうか?

企業としてのモラルが問われる

DirectX対応ハイエンドビデオカードの分野がnVidiaの独占状態にあり価格が高騰する中、それ以上のパフォーマンスとより安い価格という振れ込みで登場したRADEON8500は私も含め多くのPCユーザーが大きな期待をしていたと思います。しかしベンチマーク対策疑惑、不具合多発・不安定極まりないドライバ、流通後にバルク・OEM向けの製品名を変えるといった今回のRADEON8500にまつわるATIの行いにはがっかりさせられただけでなく怒りすら感じます。こんなことをしてはnVidiaからシェアを奪回するどころか信用を失うだけなのでは?これではATIに期待していた人が“やっぱりnVidiaが良い”って思ってしまうことになってしまいます。
それでもDirectX8.1に完全対応し、GF3に匹敵するパフォーマンスを持ちながら価格はそれよりも安いというのは評価されるべきですし、nVidiaの新チップGeForce3Ti500搭載カードが5万〜6万円という価格で発売されたを見るとやはりATIが頑張ってくれないとビデオカードの将来は暗いわけです。ATIはAll-In-Wonderに見られるように早くからTVチューナーやビデオキャプチャ、DVD再生支援機能といったマルチメディア指向の製品を手がけ、発色の良さからMach64時代からのファンも多いのだから、変に“フレームレート至上主義”を追わずにこういったATIの独自性を大事にしつつこれまで通りにパフォーマンスを向上させていって欲しいものです。

現時点ではRADEON8500(LE)はお勧めできません。今後のドライバの改善によっては前評判通りのものになるかと思いますが、その時にはまたFSの動作状況など報告しようかと思います。

関連URL

ATI
http://www.ati.com/jp/pages/jp_index.html

TORICA
http://www.torica.com/

AKIBA PC Hotline 『「RADEON 8500」のリテールパッケージ発売、バルク品は別モデルと判明 』
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20011103/etc_r85retail.html

PC Watch 『ATI、RADEON 8500の低クロック版「RADEON 8500LE」を発表 』
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/20011030/ati.htm

ASCII24 『初のブランドネーム入りリテール版RADEON 8500カードがTORICAから、クロックはバルクと同じ』
http://akiba.ascii24.com/akiba/news/2001/10/25/630757-000.html